後に擬態をやめるニンゲン

平凡社会人一年生によるなんでもない毎日の気づき

忙しい人のための日経新聞 4月22日

忙しい人のための日経新聞

信頼の日本経済新聞 : 日経のメディア | 日本経済新聞社2020/04/22

銀行送金手数料 下げ検討

全銀協公取委報告受け 適切な水準探る

  • 記事概要

    銀行の口座間送金手数料をめぐって、公正取引委員会全国銀行協会が協議し、1年後を目処に手数料の適切な水準に設定することを目指している。

    現在、銀行間での送金には金額に応じて一定金額の手数料が振り込む側に付加される。この制度は約50年間見直されておらず、決定当初かかっていたシステム維持や送金手続きにかかる金額は大きく変化しているとのこと。

    実際、欧米諸国ではすでに送金手数料が撤廃されている例もあり、手数料をとる日本の仕組みはやや時代遅れとなりつつある。

    今後、協議の末手数料の引き下げが決定されれば、我々民間人にもキャッシュレスでお金の移動をする文化が訪れるかもしれない。

決済基盤 開放促す フィンテック参入後押し

  • 記事概要

    手数料の議論と並行して、銀行のみが参加を許されているシステムに、フィンテック企業なども接続できるようにするかどうかの議論も開始する。

    現在インターネットでのオンライン決算時に銀行口座との連携を拒否されることがある。今回公取委はそういった行為を独占禁止法に違反する恐れがあると指摘した。伝統的に銀行が独占してきた決済インフラの解放を促し、フィンテック企業の参入を後押しする狙いだ。

    ただし、誰にでもシステムへの接続を許可する仕組みとなれば、安全性が懸念される。これまで銀行口座関連では大きな失態をしてこなかっただけに、慎重に協議が進められるだろう。

私見

この記事で重要なポイントは手数料の是非ではなく、銀行システムにフィンテック業者が容易に接続できるようになることで、フィンテックのサービスの質が向上し、かつ消費者側のコストも抑えられるようになることで、これまでガチガチだった銀行一強体制がくずれ、競争が生まれる可能性がある点だ。

また、銀行は今まで口座の維持費等を徴収するのが困難だったが、こうしたフィンテックとの連携により、消費者にとって利便性が向上すれば、もしかしたら口座維持のための手数料を取る仕組みができるかもしれない。

これから先、金融業界に新たな風が吹くことに期待といった感じでこの記事については終わりにする。

対面指導 崩さぬ文科省

オンライン授業に壁 高校の単位認定制約

  • 記事概要

新型コロナウイルスの感染拡大による休校が長期化する小中高校で、学習の遅れを防ぐオンライン授業の導入が進んでいないことが、日本経済新聞の調べで分かった。対面指導なしでは原則、単位として認めない文部科学省の規制が高校側の消極姿勢につながっている。一部の自治体が実施を計画していることから地域による学力差も生じかねず、生徒や保護者らが教育機会の均等を求める声は切実だ。

以下略

日経新聞2020年4月22日朝刊より

日本 世界の対応と比べて遅れ

  • 記事概要

国連教育科学文化機関(ユネスコ)の集計によると、21日時点で190カ国・地域以上が全国規模で学校を閉鎖しており、15億人以上の生徒らに影響が出ている。日本のように対面授業の縛りがきつくない各国では、オンライン授業実施の動きが相次ぐ。

米国は州ごとで教育課程を設けている。大半は対面授業を前提に「最小授業日数」を定めているが、試験の成績次第で進級や進学は可能で、オンライン授業も学習成果として算入される。ニューヨーク市は感染拡大後、30万台のiPadを用意して貸し出すなどした。

以下略

日経新聞2020年4月22日朝刊より

私見

  • とにかく日本の平等主義体制が足かせになっている。オンライン教育を柔軟に認める体制を整えるべき
  • そのために、日本の単位認定の制度について今一度考え直す必要あり
  • こういったオンライン授業を進めるにあたって、いろんな法整備がなされていくように、いままで手付かずになっていて凝り固まっている法制度が解されていく流れができららいいなと思う。

銀行の外債運用 4割がBBB格

日銀「堕天使格下げのリスク指摘」

  • 記事概要

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済の混乱が邦銀の有価証券運用を直撃する恐れがある。日銀は21日公表した金融システムリポートで、銀行の持つ外債の約4割は投資適格級の中で最も格付けが低いトリプルB格だと指摘した。景気が悪化し、市場などで「堕天使(fallen angel)」と呼ばれる投機的水準に陥る格下げが増えている。日銀は実体経済から金融システム不安につながるリスクに強い警戒感を示した。

以下略

日経新聞2020年4月22日より

簡単に記事をまとめると

銀行は保有している債権を回収できないリスクを抱えている。

なぜなら、銀行が持っているのは、経済危機に対応できるような財務の安定した企業ではなく、低格付けで信用リスクの大きな企業だからだ。

このコロナショックによってアメリカでは多くの中小企業で業績悪化が深刻となり、格つけ会社による、格下げが行われている。格下げによって一気に価格が下落し、中小全滅とならぬよう、米中央銀行FRBは格下げされた企業の債権を購入し、市場はいったん安定した。

このままコロナショックが長期化すると、銀行が債権を回収できず大きなダメージをくらうとみられており、この先さらなる危機につながりかねない。

私見

コロナショックはしばしばリーマンショックと比べられてきたが実際には性質が異なる。

リーマンショックでは金融の不良債権が発端で実体経済に大きな影響が出た。それに対してコロナショックでは外出規制などを通して実体経済が滞ることで金融システムに影響が出る可能性がある。

じゃあ同じような実体経済を発端とするものとして自然災害などが考えられるが、3.11の時と同じかと言えばこれも違う。コロナは被害が世界的なものである上に、かなりの長期戦となっている。明確な収束の条件も見つかっておらず、この先の展望がなかなか見えてこない。

これから先コロナの収束の条件として、EUは次の3つの条件を挙げている。

  1. 感染拡大の鈍化
  2. 大規模な検査能力
  3. 十分な医療体制

日本は検査も医療も世界各国に遅れをとっているとみられており、早急に対応することが求められている。

GAFA危うい楽観

世界的な経済活動停止の真っただ中、話題作りの達人である米アップルが16日、控えめながらも廉価版スマートフォンiPhone(アイフォーン)」の新モデルを発表した。大量採用を続けてきたことがウォール街で話題になってきた米グーグルは15日、欠かせない新規人員を除き新規採用を打ち切った。経費削減を掲げる企業が圧倒的に多い中、米アマゾン・ドット・コムは逆にアクセルを踏み込む。新規採用目標を13日までに計17万5000人に引き上げたことで、株価は最高値を更新した

AMAZON採用増 株価も増

世界の様々な企業の業績が悪化していく中でも大きく株価を伸ばしているアマゾン。採用人数を増やすことも決定しており、AWSによるクラウドサービスの王、そして小売最大手としての地位はより強固なものになっている。

これまで即日配送体制の実現や高品質のクラウドサービスの安価提供に向けて膨大な投資をしてきた分、今回のコロナショックにもうまく対応することが可能となっている。

GOOGLE 積極採用姿勢崩す 広告費減問題視か

これまで積極的に採用を行ってきたGoogleがついに新規採用を凍結した。Googleは創業以来初の減収になりそうな業績悪化に直面している。旅行・イベント広告がほぼなくなったほか、中小企業・ローカル広告も壊滅状態に陥っている。

とはいえ今回のコロナで染み付いたデジタル消費の習慣はコロナ収束後も続くとみられており、株価反発の局面には一気に押し返すと考えられている。

APPLE SE発売決定は見切り発車?

アップルは16日、廉価版iPhoneの新モデルを発表した。店舗が閉まっていて多くの見込み客は職を保てるかどうかを心配している時期ではあるが「とりあえず出してみよう」という雰囲気があったという。アップルはもともと発売を予定しており、製造元の中国で生産活動が活発になってきたことから発売を控える必要があまりないと判断したのだろう。この低価格版iPhoneがあらたな顧客層を取り込めるかが注目されている。

しかし市場にとってはこの廉価版iPhoneはさして重要な材料ではないという。なんでもウォール街がもっとも注目しているのは9月に発表が見込まれている「5G」対応のiPhoneだからだ。中国の後を追うことができるのかが鍵となっており、まもなく生産体制に入るとみられる。コロナの影響もあり先行きが見通しにくい中、アップルの幹部は難しい判断を迫られている。

感想

現在GAFAは世界にとってとてつもない存在感を示している。コロナショックで全企業がダメージを負っているものの、相対的にも絶対的にもGAFAのダメージは他の企業に比べて小さく、彼らの業界トップとしての地位はより一層強固になる可能性が高いと考えられる。

豪政府、ヴァージン見切り

外資系」赤字続きで距離 経営破綻 LCC&コロナ打撃

  • 記事概要

    オーストラリアの航空2位、ヴァージン・オーストラリアが21日、経営破綻した。新型コロナウイルスの感染拡大による経営悪化で再三にわたって支援を要請してきたが、豪政府は赤字続きで再建が難しいと判断。株主の9割が外資であることもあり、見切りをつけた。世界の航空会社も経営は厳しさを増しており、今回の破綻は政府との距離が企業の生殺与奪を左右することを浮き彫りにした。

    まず、オーストラリアの国内シェア2位であるヴァージン・オーストラリアが経営破綻した。

    その原因としては、コロナショックによる国内外移動の需要が激減したことはもちろん、LCCの台頭によるものが大きい。しかし、本質はそこではなく、国がヴァージンを見捨てたというのが本記事のポイントである。

    ヴァージンは感染症の拡大を受け、3月下旬より全国際線の運行を休止、国内線も9割減らした。3月末には資金繰りが悪化し、豪政府に対して14億豪ドルの支援を要請したが、政府はこれを拒否した。ヴァージンは直前まで政府に支援を懇願したとされているが、いずれも拒んだのだろう。

    ではなぜ政府はヴァージンを見捨てたのか。モリソン首相は簡単に言えば「民事不介入」との姿勢を示していたのだが、これは表向きの理由であり、実際は実質外資企業のようなヴァージンを国が救ってやる義理はないと判断したと考えられる。

    ヴァージンはシンガポール航空エティハド航空、中国の南山集団と海航集団の4社がそれぞれ2割ほどの株式を握っており、外資系の企業だとの認識があった。また、ヴァージンは2000年に参入したばかりでカンタス航空に比べると歴史が浅く新参のイメージがつきまとうことも政府が助けたがらなかった要因の一つだろう。

    こういった歴史的な経済危機の際、企業の生死を握っているのは個人投資家でも機関投資家でもなく、「政府」だということが改めて認識されることとなった。

補足 世界の航空会社

きっとこの記事を読むと、日本ではJALANAはどうなってるんだろうかとか、世界ではどうなってるんだろうかと気になるかと思うので、世界各国の航空業界への支援について軽く整理しておく。

  • 日本

    ANAJALが加盟する業界団体が支援を要請し、政府が対応策を講じているとのこと。具体的な支援策や金額はまだ決まっていないが、とりあえずは乗り切れそうか?

  • アメリ

    アメリカン航空デルタ航空などに1兆円規模の支援を決定。世界的な大物投資家ウォーレンバフェット氏がデルタ株を売りに出したことで不安もあったが、アメリカもなんとか耐えそうか?

  • イギリス

    ヴァージン・アトランティックが5億ポンドの貸付を要請しているものの決着はついていない模様。オーストラリアに続いてイギリスのヴァージンも怪しいのか?

  • シンガポール

    シンガポール航空の緊急資金調達に政府投資会社が対応。こちらも金額は明確にわかっていないが、政府は支援に肯定的とのことで、なんとか乗り切れそうか?

今朝の日経読んだ?って話 2020/04/21

日経新聞 私的ホットトピック

任天堂が「スイッチ」生産上積み検討

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記事概要

まず、本記事の大まかな内容について整理する。

  • 背景

    新型コロナウイルスの影響で外出自粛が続き、外に出ずに楽しむ方法としてゲームが注目されている。中でも家庭用ゲーム機の代表である「Nintendo Switch(以下スイッチ)」の人気が急上昇している。2020年3月末に発売された「あつまれ どうぶつの森」の人気も相まって品薄となり、メルカリなどのフリマアプリでは中古のスイッチが新品販売価格の2倍で売られるといった信じられない状況が続いている。

  • 任天堂の対応

    任天堂は4月14日に一時停止していたスイッチの国内出荷を再開するとしており、直販サイトで予約されたものは4月下旬から5月中旬に配送する予定となっている。

    しかし、スイッチの部品の多くは東南アジアで生産されており、東南アジアの活動制限措置の影響で思うように部品の輸入ができない状況となっており、明確にいつどれくらいのスイッチを納品できるかがわからないとのこと。

小学生並みの感想

材料費が云々とか、生産工程が云々とか、そういった諸事情をなにもわかっていない私がこの記事を読んだ際に思ったことは「今の売れ行きを見れば、スイッチの売り上げは明らかに伸びるんだからさっさと増産決定してればよかったのに」ということ。スイッチが品薄になったのは何もここ1ヶ月の話ではない。2月ごろからずっと品薄だったのだから、もっと早く増産を決定していればもっと売れたんじゃないのか、何をもたもたしているんだと考えた。

実を言うと私は、かねがね任天堂の対応は遅いと感じていた。

約一年半前に大乱闘スマッシュブラザーズシリーズの最新作がリリースされた。このシリーズは当然スイッチのコントローラーでプレイすることが可能なのだが、特有のコントローラー(通称GCコン)を使う方がプレイしやすく、多くのスマブラファン(特に昔からプレイしている人)はGCコン至上主義者と化していた。

任天堂のリリースした最新作は過去作品に登場したキャラクター全てが登場するということで、「スマブラをやっていたけど、やらなくなってしまった顧客層」(以下リターン層)を呼び戻すことに成功した。

すると何が起きるか。リターン層は新たにスイッチとスマブラとともにGCコンを新たに購入し、需要が激増したことでGCコンの品切れが起こった。その結果、GCコンはメーカーの希望小売価格である2500円の2,3倍で売買されるといったプレミアム化が起きてしまった。

といった具合で、とにかく任天堂はプレミアム化してもなかなか増産や生産再開といった対策を取らない。

さて、ここまで読むと、「何故任天堂の対応は遅いのだろうか」という疑問が浮かぶのではないだろうか。次節においてそこら辺についてみていこうと思う。

任天堂の対応はなぜ遅い?

自社工場を持たず、生産を委託しているから

任天堂はどうやらスイッチなどのハードウェアやアクセサリを自社の所有する工場ではなく委託して生産しているとのこと。そのため、作ろうと思った際にすぐ作ることができない状況であることは容易に想像できる。

現在、新型コロナウイルスの拡大防止のため、世界的に外出規制が行われ、多くの工場が操業を停止している。その影響もあって今回スイッチ増産を決定しかねている状況だという。

これに関しては、しょうがないかなと思う。

慎重な経営戦略 キャッシュリッチ企業

ここからは私の想像だが、任天堂は投資を抑えて現金保有を多めにしている傾向があり、やや慎重な経営戦略をとっていると考えられる。

私がそう感じた理由としては、財務諸表による分析の結果なのだが、覚えたての人間がちょっと調べた程度のものなので、そこはご理解いただきたい。

キャッシュフロー計算書

まず、キャッシュフロー計算書(CF)とよばれる財務諸表の数字によると、任天堂は投資にあまりお金を回していないことが窺える。

50%img

入社一年目で知っておきたかった会計の基礎4 より

上のグラフは任天堂キャッシュフロー計算書を可視化したものである。

営業キャッシュフローを見ると本業による収益がどれだけ出ているのかがわかる。

投資キャッシュフローをみると有価証券の売買や工場を作るなどの投資にどれだけお金を使っているのかがわかる(マイナスが大きければ大きく投資していて、プラスだと有価証券の売買益が出ていたりする)

最後に財務キャッシュフローを見ると負債の返済を行っているのか、銀行等からお金を借り入れているのかがわかる(マイナスなら返済、プラスなら借り入れ)

さて、以上のことを踏まえてもう一度任天堂キャッシュフロー計算書を見ると、本業によって得た1705億円に対して、投資資金は453億円のマイナスとなっておりやや投資のための資金が少ないと言える(ちなみに日本の大手企業は約60%は営業CFの額と投資CFの額の絶対値が同じとなっている)

このキャッシュフロー分析から、任天堂は投資に消極的で、とにかく安定を重視した経営戦略をとっているのではないかと考えられる。

貸借対照表

次に貸借対照表について。任天堂は、現預金と短期有価証券を合わせた金額が有利子負債を上回っており、実質無借金という「キャッシュリッチ企業」の代表だと言われている。このキャッシュリッチ企業は、コロナショックのような不況時でも資金繰りの不安が小さくなり、非常に経営基盤が安定するという特徴がある。ただ、とにかくお金をためておいておけばいいと言うわけではなく、内部留保率(≒貯蓄率)が高すぎると、株主に還元しろと言われたり、成長性がないと言われてしまいかねないのだが、任天堂はそこら辺はうまくやっているみたいだ。

任天堂のようなゲーム会社は新作の売れ行きを見極めるのが難しく、好不調の波もある。仮に新作が不振でも次のゲームに開発費を確保するために、なるべくキャッシュを蓄える任天堂の姿勢は堅実なものと言えるだろう。

ちなみに、このキャッシュリッチ企業に関しては「逆風下の決算ここがポイント(2)現預金手厚く、有事の流出に備え 」という記事にて紹介されていた。

任天堂経営戦略の考察

結論としては

  • 財務の安定を最重要事項としており、工場などの投資には消極的。そのため安定した収益基盤を実現しているが、それと引き換えにハードウェアの品薄などの生産台数のコントロールに難あり
  • とにかく現金など流動資産(何かあったときにすぐに支払えるお金)が多く、不況時にも債務不履行の心配が少ない。そのため有事の際にも先々のことを考える余裕がある

といったことが見えてきた。

実際、任天堂の株価は3月中旬ごろまでは下落傾向にあったが、まさにV字回復を遂げている。

チャート画像

今では年初来の高値を更新しており、任天堂の経営戦略がうまくはまった瞬間となりそうだ。


以下補足...

一応比較対象がないとあまりイメージがつかないかと思うので、家庭用ゲーム機のプレイステーションを開発している「ソニー」の株価チャートも載せておく。ソニーは音楽事業やゲーム以外の家電等さまざまな事業を手掛けており、一概に同じ業界として比べるのもいかがなものかと思ったのだが、まあ任天堂スイッチに対抗できるのはプレステだろうということで...

チャート画像

ソニーも順調に回復しているように見えるが、年初来高値である8000円から見るとまだ15%強下落した状態となっており完全な回復には至っていない。img

ちなみにソニーキャッシュフロー計算書はこんな感じ、いわゆる日経大手企業といった姿が窺える。

経済用語ボキャ貧克服計画4

経済用語 ボキャ貧克服計画4

オプション取引について

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原油の協調減産 メキシコが強気姿勢を示す

 新型コロナウイルスの影響で、3月以降、原油価格の下落が目立っている。平時1バレル(約160L)60ドル程度だった原油が、現在20〜25ドル程度で推移。これによって世界各国でさまざまな影響が出始めた。

 まず産油国であるサウジアラビア政府の財政状況に対する懸念が広がっている。続いてシェールオイルを積極的に生産していたアメリカでは、原油シェールオイルの値段を下回ったことで、エクソンモービル等シェール業界の企業が相次いで予定していた設備投資を中止した。

そこで、主要産油国アメリカは4月10日緊急会議を開催。アメリカは1000万バレル/日の減産を要請したが、協議により970万バレル/日の減産が決定した。

ところが、日経新聞によれば、原油を1バレルあたり49ドルで売る権利=プット・オプションを購入していたメキシコは、減産に対して消極的な姿勢を示していると伝えられていた。原油安による影響を大きく受けないからだ。

今日はこのオプションについて学んでいく。

オプション取引とは

オプション取引とは、「将来(1年後など)」「ある商品(米や原油や株券)」を「一定の価格(100円)」で「買う売る」「権利」を「ある値段(50円)」で売買するという取引である。イメージしづらいかと思うので、実際に数値を当てはめて考えてみる。

Aさんは農業を営んでおり、コメを毎年100キロ生産しており、Aさんのお米は1キロ当たり約3000円程度で売買されていた。

しかし、米は需要と供給のバランスによって年ごとに値段が上下することが多く、Aさんの収入はいい年もあれば悪い年もあり、不安定だった。なんとか収入を安定させたいと思ったAさん、ここで登場するのがオプション取引だ。

オプション取引では、「1年後にコメを1キロ3000円で売る権利を買う」という取引をすることができる(このオプション取引で売買されるのはコメではなく「権利」であることが肝となってくる)。

さて、これを聞いたAさんは、コメの価格下落リスクをヘッジしようと考え、この権利を20000円で購入した。

ここから2つの場合に分けて考えていく


  1. 今年の日本は比較的温暖な気候が続き、台風にも見舞われなかったこともあり、Aさんを含め全農家が平年よりも1.5倍の収穫高を記録した。その結果、コメの供給量は増え、コメの価格が1キロ2000円に下落することとなった。Aさんのお米も2000円となり、本来であればAさんの収入は平年比17%減となる。ここで登場するのが、先ほど契約したオプション契約だ。

    Aさんは、1年前に1キロ3000円でお米を買ってもらう権利を有しており、時価がいくら落ちていても、オプションを契約した相手方に3000円で買ってもらうことができる。

    そのため、Aさんは平年通りの収入を得ることができる。

  2. 反対に、新潟や富山で全く雨が降らず、日本全体で米の収穫量が大きく落ち込んだ場合、市場では米が希少となり価格が3500円で取引されることとなった。

    このとき、Aさんは被害を受けず平年通り100キロ生産できたとき、Aさんの収入は17%増となるはずである。

    ここで疑問となるのが、Aさんがした1キロ3000円で買ってもらう契約はどうなるの?ということだろう。

    オプション取引の肝は先ほども言った通り、売買されているのは「権利」である点だ。権利というのは、行使してもいいし、捨ててもいい。つまり、Aさんはこの権利を行使すれば、市場で3500円のコメを3000円で売ることになり損するのだが、権利を放棄すれば、3500円でコメを売ることができるのだ。

    思い通りにならなければ権利を放棄すればいいのだから、Aさんの取引は絶対損しないめちゃくちゃお得な取引じゃないかと思うかもしれない。しかし、ここで思い出してほしい、Aさんはこの権利を「20000円」で買っているということを。Aさんは権利を放棄する際、この20000円も同時に失う。

    とはいえ、オプションの買い手であるAさんは確かに売り手に比べるとリスクが小さいことは確かだ。Aさんはお米の価格が落ちれば落ちるほど、市場価格と比べれば得をすることになる。それに対して、価格が上がりまくったとしたら権利を放棄して市場で売れば利益を出せる。

    このようにオプション取引においては、買い手は市場価格の上下によって利益を大きくすることはできるが、損失は最初に払った権利の値段(プレミアムという)に限定される。


以上のような取引がオプション取引と呼ばれるものだ

さて、上の例でオプション取引についてなんとなく理解していただけただろう。それでは、今回のメキシコの原油オプションについて考えてみる。

メキシコが購入した権利は「原油を49ドルで売ることができる」というもので、このまま原油価格が落ちたままでも、大きな問題がないことは理解していただけたかと思う。

ここで「市場で20ドルしかしない石油を、49ドルで買わされる相手方は大損じゃないか?!」といった疑問が生じる。この疑問について、このオプションのみを売買していたなら、この疑問に対する答えはYesであり、この相手方は大損こくことになる。

先ほどの例で話したが、買った人(先ほどの例でいえばAさん)は権利を購入しているため、放棄することが可能だが、売った人(Bさんとする)は買った人(Aさん)に権利を行使された際に応じる「義務」が生じる。そのため、Aさんに買ってくれと言われたら値段がいくらであろうとBさんは買いとる義務があるのだ。


メキシコにオプションを売った人は大損するのか

※ここから少し複雑になります

さて、メキシコから安い原油を高く買わされることになった相手方は本当に大損するのだろうか?この件について、少し複雑な話になるのだが、頑張ってついてきて欲しい。

オプション取引というのは、単純にひとつの権利を買う、売るといった一方通行の取引だけでなく、組み合わせることができる。

例えば、「1年後にコメを売る権利」をAさんに売ったBさんは、同時にCさんから「1年後にコメを売る権利」を購入することでリスクヘッジをすることができる。この点について、あまりイメージができないかと思うので、詳しい事例で見ていく。

Aさんに「1年後に1キロ3000円でコメを買う」ことを約束したBさん。

Bさんは、1年後のお米の価値は「3000円より高くなるだろう」と考え、Aさんと当該オプション取引を行なったが、3000円より安くなる可能性も捨てきれない、むしろ大きく価格が落ちてしまうと大損だ。というのを十分理解していたBさんは、Cさんから「1年後に1キロ3500円でコメを売る権利」を購入した。するとどのようなことが起こるのか。

  1. コメの価格が「1キロ2000円」となった場合

    この場合、AB間で行われた取引では、市場価格2000円のコメを3000円で購入することになり、1キロ当たり1000円-プレミアム分の損失が出る。

    それに対してBC間で行われた取引では、市場価格2000円のコメを3500円で売却することができ、1キロ当たり1500-プレミアム分の利益が出る。

    合計すると約500円分の利益となる。(厳密には500円からプレミアムを差し引いた金額)

  2. コメの価格が「1キロ4000円」となった場合

    この場合、AB間で行われた取引では、Aさんがわざわざ4000円のコメを3000円で売らないことを踏まえると、プレミアム分が丸々利益となる。

    それに対してBC間で行われた取引では、市場価格4000円のコメを3500円で売る意味がないので、Bさんもこの権利を放棄する。すると、プレミアム分が丸々損失となる。

    結果としては、AB間の取引のプレミアムとBC間の取引のプレミアムがもし等しければ利益も損失も0となる。

といった具合に、オプション取引というのはいろいろな権利の売買を通じて、どのように相場が動くのかを予想することで、様々な効果を得ることができる(リスクヘッジアービトラージなど)。

以上のことを踏まえると、メキシコに「1バレル49ドルで売る権利」を販売したディーラーは原油価格が上がったら困る人(中国の自動車工場とか?)との間で「1バレル60ドルで売る」という権利を購入しているかもしれない。

考え出したらキリがないのだが、とにかく一方通行の取引を行っているとは限らず、むしろ双方向で取引をおこなったいると考えられ、メキシコにこのオプションを販売した販売元が大損しているとは断定できないのだ。

おわりに

さて、最後にオプション取引について整理して終わろうと思う。ポイントとしては以下

  • 将来のある時点において
  • 今きめた、一定価格で
  • ある商品を
  • 売る、または買う
  • 権利を
  • 売買する

のがオプション取引である。

ちなみに、今回は例でコメを、具体的な事例では原油について取り扱ったが、このような価格が常に上下するもの(例えば為替相場など)は全てこのようなオプション取引が行われていると思ってもいい。

とても複雑な取引なので、完全に理解するのは難しいと思う。今回紹介したオプションはプット・オプションと呼ばれる将来「売る」権利の取引と、プットオプションの買いと売りを組み合わせたバーティカルベアプットスプレッド取引というもので、他にもいろんな組み合わせがあり、それぞれについて、どのような値動きを予想してどのような目的で取引するのかというのが違うので、もし興味があれば調べてみると面白いと思う。

では今回の勉強はこの辺で。

経済用語 ボキャ貧克服計画3

経済用語 ボキャ貧克服計画3

3日目 4月14日

ダイリューション

直訳では希薄化のことを指す。

既発行の株式を公募や株式交換のために新規発行することによって、発行済み株式総数が増え、既存の株式の価値が公募や株式交換後に比べて相対的に落ちることをいう。ダイリューションが起こる際には株価が少なくとも一時的には下落するため、継続的な下落を見込むのであれば空売りを提案する等が可能になる。

売り出し・PO

既発行の株式が大規模に売り出されること。大規模な株式の売り注文が複数の投資家によって個別に行われることによって株価が大きく下落することを防ぐために、期間を定めてまとめ売りすること。売り出しの際には時価よりもやや安値で売りが行われる。

基本的に売り出しの際には自社株買いがセットで行われることが多く、加えて流通している発行済み株式総数が増えるわけではないのでダイリューションも起こらないため、株価の大きな下落が起こりづらい。そのため、この先の株価の展望としてある程度株価の上昇が見込める場合には既存の株主には買い増しを推奨するなどの提案が考えられる。

株価の展望としては経営基盤や収益構造の多角化などももちろんのことながら、売り出しによる影響についても考慮するとよい。例えば、売り出しによって主要株主の多くが入れ替わることにより、新規の株主が経営に目を光らせることとなり、経営改革や利益率の向上が進む可能性や、もともと流通株式数が多くないながら人気銘柄であった中小企業の株であれば、大量の株式を入手するチャンスが生まれること、そして自社株買いによる増配の見込みなどが挙げられるだろう。

ちなみに、自社株買いによって増配が起こる要因としては、企業が買い戻した自社株を焼却することで発行済み株式数が減少し、1株当たりの利益や資産価値が向上することになる(ダイリューションの逆)からである。

株式交換

株式交換とは企業買収の方法の一つで、親会社となるA社が子会社となるB社の株主に対し、B社株式を新たに発行するA社株式に交換することである。A社は形式的には買収に費用がかからないことがメリットであり、B社株主にとっては少し割高な交換比率でB社株式をA社株式に交換してもらえることで単純に資産価値が上がることがメリットとなる。反対に、A社株主にとっては発行済み株式数が増えることで株の希薄化が起きることがデメリットであり、B社株主にとっては単元未満株になる可能性があることや、主要株主ではなくなることがデメリットであると考えられる。これらを踏まえて株式交換に反対するB社株主はA社に対して株の払い戻しを請求することができる。

ちなみに、子会社となるB社の純資産が親会社となるA社の純資産の5分の1以下であるときには簡易株式交換を行うことができる。簡易株式交換では通常得なければいけない株主総会特別決議の可決を必要としないというメリットがある。

経済用語 ボキャ貧克服計画2

日経新聞 ボキャ貧克服計画

2日目 4月10日

クロスセルとは

クロスセルとはある商品の購入を検討している顧客に対し、別の商品もセットもしくは単体で購入してもらうためのセールス手法。

例えば、スマートフォンを購入した際に、ケースや保護フィルムの購入を提案したり、Netflixの契約を促したりといった感じ。

ちなみに...類義語的なものにアップセルという手法もあり、こちらはアップグレードを促して客の単価を向上させる営業手法である。

空売りとは

株券を持たず、あるいは、持っていてもそれを使用せずに、他から借りて行う売付けをいう。

空売りは、近い将来に株価が下落すると予想し、現在の株価でいったん売りを出し、値下がりしたところで買い戻して借りた株を返す。この時の差額が利益となる。株価の下落局面でも利益を出せることがメリットとして挙げられる。また、空売りには、株価の下落を狙った投機的なものと、株価下落による所有株の損失を防ぐつなぎ売りの2種類がある。

証券金融会社は、空売りするための株式の調達が困難になった時に、外部から株式を調達する。このときに発生する株式の調達手数料(品貸料)を逆日歩といい、売り方が負担する。

要するに信用取引の売り建て。

クラウディングアウト

国が国債を大量発行し、金融市場から大量の資金を調達した結果、金融市場の資金が不足する。その結果、民間企業という多くの資金の借り手の数に対して金融市場にある資金量が少なくなり、金利が上昇してしまう現象。

国債の大量発行は、金利上昇を起こし、民間企業の資金調達を困難にしたり、国民が住宅ローンや自動車ローンを組みにくくなるなど、消費と設備投資の現象を招く。というのがクラウディングアウト

経済用語 ボキャ貧克服計画1

日経新聞 ボキャ貧克服計画

1日目 4月8日

緊急事態宣言:自粛要請に法的な根拠

3月に成立した改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づいて政府が発令する宣言。首相が対象地域や期間を指定して発令する。発令すると、対象地域の都道府県知事は住民に外出の自粛を要請したり、事業者に施設の利用制限を求めたりする根拠が生まれる。しかし、外出自粛要請に法的根拠が生まれただけで、罰金や罰則があるわけではない。米欧の外出禁止例のような強制力がないため実効性は住民や事業者の自発的な対応に委ねられる。現行法では道路の封鎖など事実上のロックダウンはできない。

日経新聞4月8日朝刊 きょうのことば より

とはいえ、緊急事態宣言が出たことによりデパートなど小売店が相次いで臨時休業を発表していることから、小売店の業績は伸び悩むことが予想される。4月の業績がどの程度落ち込んだのかは決算期である8月頃まではわからないうえ、小売店の多くは来期の業績予想を不明と回答しており、株価の下落は緊急事態宣言発令直後、つまり今と決算期の二段階に分けてくるのではないかと考えられる。

ボラティリティ・インデックス 通称恐怖指数

新型コロナウイルスの感染拡大が一服する「ピークアウト後」に市場関係者が気をもんでいる。欧米の感染拡大一服などが好感され、7日の日経平均株価は3日続伸した。巨額の緊急経済対策も追い風だが、足元では新年度の業績予想を「未定」とする企業が相次ぐ可能性が出ている。株価形成の根幹と言える材料を欠けば、値動きが荒い相場になるリスクが増す。

売り込まれてきた銘柄が買い戻されている。7日の東証の業種別株価指数の上昇率をみると「サービス業」が約4%と上位で、「空運業」(約3%)や「その他金融業」(約3%)の上昇も目立った。いずれも新型コロナで乱高下した3月の相場で売られていた業種だ。

材料視されたのは米ニューヨークやスペインなどで感染者や死者数に「ピークアウト」の兆しが出ていることだ。日経平均の予想変動率を示す日経平均ボラティリティー・インデックス(VI)も40と、3月16日につけた高値(60)から下落。市場参加者の不安心理の高まりを示すとされる指数が落ち着き、「海外ヘッジファンドなど短期筋の投資マインドが明るくなっている...以下略

日経新聞 4月8日朝刊 スクランブル より

ボラティリティインデックスとは何か

ボラティリティとは、「落ち着きがない」「移り気だ」といった意味で、金融用語としては投資商品の値動きの荒さの幅を示す。対象の株価の値動きが激しい場合は「ボラティリティが大きい」と、逆にゆるやかだと「ボラティリティが小さい」と表現する。ボラティリティの大小は、株式取引を行う投資家によっては投資を行う上での重要な判断材料のひとつ。ボラティリティの動きによって利益を出すか損失を出すか大きく状況が異なるから、ボラティリティの大きさは投資家の心理と密接につながっているといえる。特に相場が暴落する時にはボラティリティが極端に大きくなって、損失を抱えるかもしれないと投資家が不安になることから、投資家の恐怖心理を示すといっても過言ではない。

とまあちょっと堅苦しいこと言っているけど、要はVIが大きい時は株価の上下動が激しいと予測され、小さい時は比較的安定した動きになると予測されるというもので、安定してくれている方が投資しやすいよね、みたいな感じの指数らしい。

バランス型投資信託 レバレッジ型/損失限定型

本日の朝刊掲載記事「市場動揺 投信ブレーキ」によると、新型コロナウイルスによる世界の金融市場の動揺を背景に、投資信託の人気商品に異変が起きているとのこと、本来かなりの安定感をもって運用されるはずの投資信託が元本割れなどを起こし、早期償還が相次いでいるというのだ。

投資信託にはバランス型というものがあり、株式や債券に分散投資することでリスクを抑えた投資信託で、多くの金融商品取扱業者にとって主力商品となっている。しかし、このバランス型の低リスク投資信託さえも苦境に立たされているというのだ。

バランス型の投資信託の中にはレバレッジ型という少ない元手で比較的大きな金額の持高を作れる先物取引がある。2月に人気が増し、高レバレッジ化が進んでいたが、3月以降は株式相場が急落し、債券先物価格も乱高下した。週間で基準価格が2〜3割下落するものが相次ぎ資金流入にブレーキがかかった。

また、バランス型投資信託の中でもさらにリスクを抑えたものとして、損失限定型の投資信託というのがある。この損失限定型では、市場のリスクが高まると株式を売って現金などにシフトして損失を限定する。さらに基準価格に下限値を設け、その水準まで下落したら繰り上げ召喚する安全設計を売りとしている。こちらの投資信託も3月後半になって、下限値に到達し元本割れの状態で償還となる事態が発生している。

比較的安定的と思われてきた投資信託までも元本割れを起こすこのコロナショック、一体投資家はどこにお金を回せば良いのだろうか...

キューバって国の話

キューバって国の話

f:id:eJern:20200412160128j:plain 2020/3/22

はじめに

 まず、キューバと聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。「最近アメリカと国交が復活したらしい」「キューバ危機」「カリブ海最大の島」「世界一成功している社会主義国家」「メジャーリーガーがいる」などなど、様々なイメージがありつつも、キューバという国をある程度ちゃんと理解している人は少ないのではないかと思う。私もその一人だった。キューバ社会主義国家であること、アメリカとの国交を断絶していたが、最近(オバマ大統領時)アメリカと国交が復活したこと。知っていたのはこれくらいだ。「キューバって社会主義国家ってこと以外になにか語ることあるの?」と聞かれれば、「まあ全ては社会主義国家ってことに帰着するんだけど…」って感じではあるのだが、ただ一言に”キューバ=社会主義国家”と片付けるにはもったいないくらいキューバは私達に様々なことを考えさせてくれるのだ。

 今回はキューバという国の歴史をたどりながら、キューバという国の面白さについて書いていこうと思う。

歴史

2-1 コロンブスによる発見から植民地時代

 キューバカリブ海最大の島国で、大航海時代に新大陸発見に向け動いていたコロンブス一行に発見されることから歴史が始まる。コロンブスキューバの東端にあるバラコアという街に上陸したと言われ、上陸した際にキューバの壮大な自然を前に、「この世で最も美しい島だ」と感動したらしい。

 スペインはすぐさまこのキューバを植民地とすることにした。一説では、スペイン語の調停書を持ってきて、理解できるわけもない原住民に、”断れば死を、受け入れれば奴隷化を”強いたと言われている。どう考えても地獄の二択なのだが、当時のスペインはキューバにとっては強すぎる相手。受け入れざるを得ず、キューバはスペインの植民地となる。

 その後コロンブスキューバという土地のもつサトウキビ大量栽培の可能性をすぐさま見抜き、二度目の航海にはサトウキビの苗を大量に持参したと言われている。スペインはここからキューバを大サトウキビ農場として発展させていく。アフリカから大量に奴隷を仕入れ、奴隷農場をどんどん広げていった。その結果、一部の大農園主をだけが富を拡大し、農園で働く奴隷たちは貧しさを極め、貧富の差が広がっていった。

 そしてその頃、砂糖の一大産地であったハイチで奴隷による反乱が起き、砂糖プランテーションが崩壊したことを受け、キューバは世界最大の砂糖生産国となっていく、

 ちなみに、キューバの原住民はスペインにより持ち込まれた疫病によってその殆どが死んでしまったとされている。その他にもスペインのあまりにも強引な統治体制に耐えかねた者が反乱を起こし、処刑された者もいる。処刑を前にした族長に宣教師たちは「私達を信じれば天国に行ける」と言ったのに対して、族長は「お前たちスペイン人がいるのが天国なら、地獄のほうがマシだ」と言い放ったなんて逸話もある。漫画みたいでかっこいい…。漫画なら彼の意思を継いだ弟子たちが数年後、数十年後に力をつけて革命を成し遂げるよね。さて現実ではどうなるのか…

2-2 第一次独立戦争から第二次独立戦争

 スペインからの支配に疑問を持ったキューバ生まれの白人(クリオーリョ)の農園主カルロス・セスペデスが、自身の農場の奴隷を開放し、スペインに宣戦布告。以降10年間に渡って戦争が続いた(十年戦争)。結果としてはキューバ革命軍の敗北となるが、この10年戦争をきっかけにキューバ各地で革命軍が結成され、スペインに対する反発が起きていた。そんな中、作家として絶大な影響力を持ちながら政治家でもあったホセ・マルティが平等な社会を求め第二次独立戦争を開戦。指揮者だからといって後ろでふんぞり返るでもなく、むしろ自分がみんなのお手本になるべきだと考えたマルティは、戦線にがんがん出ていき、スペイン軍の銃弾を受けて死んだ。

 ちなみに、なんでかはわからないけど、キューバの革命に関わった若者は皆パッションが溢れすぎていて、マルティのように「俺がやらなければ!」みたいな使命感を抱き、みんな命を惜しまずに進軍していく。後に出てくるカストロゲバラもその一人。

 さて、第二次独立戦争も結局の所キューバの敗北に終わるのだが、終わり方が少し異なる。第一次独立戦争ではスペインに敗北して終わっていたが、実は第二次独立戦争では、スペインには勝利するのだ。しかし、その勝利の背景にはアメリカの手助け(勝手に参戦してきた)があり、スペインからの支配を退けはしたが、今度はアメリカによる支配が始まるのだ。当時キューバは外国資本の工場が次々に入り込み、その分砂糖の生産が加速して行く。アメリカはキューバにどんどん工場を設け、気づけば砂糖の輸出先のメインはスペインではなく、アメリカになっていた。このときからすでにアメリカによる実質的な支配がじわじわと忍び寄っていたのだ。

 キューバはこの第二次独立戦争を経て独立することとなるのだが、アメリカとの間に不平等条約の締結を強いられることとなる。アメリカ軍の基地を置くこと、アメリカ以外の国からお金を借り入れてはいけないこと、アメリカ以外の国に土地を貸してはいけないことなどなど、江戸時代に日本が開国させられたときと同じだ…

2-3 アメリカとの癒着からキューバ革命

 アメリカによる支配はバティスタ政権時にピークを迎える。アメリカの支援を受けてクーデターを起こし、政権を手に入れたフルヘンシオ・バティスタは、私利私欲を満たす独裁を始めた。自分のためにキューバという国をアメリカに売ったのだ。アメリカ政府,企業,マフィアにキューバ国内における利権を保護して、キューバ国民が搾取されるのを黙認していたのだ。

 そんな腐敗したバティスタ政権を終わらせるべく、フィデルとラウル(カストロ兄弟)が立ち上がる。1953年、サンティアゴ・デ・クーバにあるモンカダ兵営を奇襲する(この事件が後のキューバ革命の出発点だと今でも語り継がれている)。この奇襲は結果としては失敗に終わりフィデルは投獄されてしまう。しかし、フィデルを開放せよとの声が高まったこともあり、恩赦によりフィデルは釈放されることになる。フィデルは、革命のために戦力を整える必要があると考えメキシコへ亡命。そこで革命の鍵となる盟友チェ・ゲバラと出会う。

 ゲバラとの出会いから2年がたった1955年、約80人の仲間とともにフィデルは再びキューバに帰ってくる。ちなみに、当時キューバ上陸のために使われたグランマ号は定員12名ほどだったそう。そのグランマ号に80人近くも乗ってキューバに渡ってきたというのだから驚きだ。しかもフィデルは、自分が帰ってきたことをキューバの国民に伝え、安心させなければと考え、上陸場所を予め宣言していたらしく、当然のごとく待ち伏せを受け、8上陸した仲間の殆どを失うこととなる。なんていうか…ほんとにキューバ革命に携わったキューバの青年たちはパッションバカで、「私が来た!」みたいなヒーロー気取りを平気でやってしまうんですよね…(決してけなしているわけではないです、実際彼らはヒーローだしね!)

 帰ってきたフィデルたち革命軍は労働者層から熱い支持を受け各地で仲間を集め、1959年、ついに首都ハバナを制圧し、バティスタ政権を倒すことに成功する。フィデルらは革命政権を打ち立て、いよいよここで初めて「キューバ革命」が達成される。

2-4 アメリカとの対立から社会主義国家へ

 バティスタ政権を追い出した革命政権はアメリカから敵対視されることとなる。まずアメリカはキューバの砂糖の輸入量をコントロールすることで、経済難に陥らせる。それでも音を上げないキューバに対し、平等主義を嫌った当時の富裕層のキューバ人を利用して、キューバを攻撃。結果として、ソ連の援助を受けたキューバがこの攻撃を退けるが、アメリカはこれを受けキューバとの国交を断絶。経済難となったキューバソ連からの支援を得るべく社会主義体制へと移行していく。

 こうしてソ連とのつながりが強まり、ソ連アメリカへの圧力のためキューバ国内に核ミサイルを配置しようとして起きたのが有名な「キューバ危機」だ。ソ連が核ミサイルを持ち帰ることでなんとか一件落着する。

 その後1991年ソ連崩壊を受け経済的な支援がなくなったキューバはふたたび経済危機に。これを受け、政府は経済改革に乗り出す。外貨の所持解禁や、一部自営業の認可など、部分的に市場原理に基づく仕組みを導入して回復の兆しが見られるようになる。

 その後、革命を実現し、国の最高指導者としてキューバを導いてきたフィデルが指導者を引退。弟のラウルにその地位を引き継いだ。ラウルもフィデルの方針を受け継ぎ、経済改革を繰り返し、国の発展及び維持に努めた。

 2015年、ラウルとオバマが対談。カナダ、ローマ教皇などの強力を得て、キューバアメリカの首脳会談が実現。アメリカとの国交回復へと向かうことになったが…トランプ大統領キューバとの貿易や金融取引の規制を発表し国交回復ムードに陰りが見えている。

2-5 これからのキューバ

 キューバ革命の主役であるフィデルチェ・ゲバラが亡くなり、弟ラウルも最高指導者を引退。加えてオバマ大統領時に回復するかに見えたアメリカとの国交もトランプ大統領になった今どうなるのかわからなくなってきてしまった。

 これからのキューバは一体どのように発展していくのだろうか、社会主義国家としての姿を貫いていくのか、それとも資本主義の波に飲まれていくのか注目だ。

世界で一番成功している社会主義国家とは…

3-1 資本主義と社会主義

​ 先程から何度も書いてきたが、そもそも社会主義と資本主義とはなにか、ということから考えていく。

​ 資本主義とは、本当に平たく言えば、資本(お金)がある人が偉い社会である。お金がある人が、あらたにお金を稼ぐ仕組みを作り出す。頑張った人はその分だけお金を稼ぐことができるし、そうして稼いだお金で豊かな生活を手にすることができる。そういった社会だ。資本主義では自由競争市場を主としている。自由競争市場とは、市場に国が介入することがないため、誰でも勝手に企業を作ることができるし、ビジネスをスタートすることができる。すると一分野、例えばラーメン屋が大量にできたりもする。しかし、当然供給過多となり、消費者は多くのラーメン屋の中からうまいラーメン屋を選び、選ばれる店と選ばれない店に分かれていく。選ばれなくなったラーメン屋は自然に店を畳む。そうして供給量が勝手に調整されていく(ちなみに、これがアダム・スミスの言う「見えざる手」と呼ばれるものらしい)。この自由競争市場では、他社よりも優れたサービス、優れた商品を提供できなければ店が潰れてしまうため、自然と全員がよりよいサービスを目指すし、他よりも劣っているものは勝手になくなっていく。そうして経済が勝手に発展していく。資本主義社会では、ビジネスに成功して富を築いた者とそうでない者の間に大きな差が生じる。ビジネスに成功して、プライベートジェットで移動し、女優とパリコレを見に行って、有名画家の絵を落札して部屋に飾る事ができる人がいる傍らで、新宿駅高架下でダンボールにくるまって眠る人がいる。そんな格差社会が普通に生じうるのが資本主義のデメリットとも言えるだろう。

 対する社会主義とは、平たく言えば、みんな平等がいいよね、みんなが稼いだお金をみんなで使っていこうよっていう社会だ。社会主義では国が経済を管理していく。そのため、どこの会社が何をどれだけ作るのかを、国のトップがすべて管理してコントロールするのだ。したがって作り過ぎとか供給不足は起こらないし、国がうまく回っている分には失業者も出ず、みんな最低限の生活を保障されることとなる。この社会主義では、国にお金が集約されたあとで、国民に再分配するため、国に富が蓄積されることとなる。すると、国はその集まった富を医療や教育の無償化と言った社会保障にまわすことができるようになる。そうしてみんなが豊かな生活を手に入れられるという(理論上は)夢のシステムなのが社会主義なのだ。しかし、当然そんないいことだらけの夢のシステムなわけがない。社会主義国家には経済発展しにくいというデメリットが存在するのだ。

​ 会社は競争なくして発展しない。国に支えられて、一定の仕事が確保されているし、他に競争する企業がいないのだから、会社が潰れることもない。そんな状況でわざわざ新製品の開発だとかサービスの向上だとかいう企業努力はしないのだ。会社に限らず、人間というのは努力の有無に関わらず結果が同じになるのならば努力を怠る生き物なのだ。

3-2 世界に現存する社会主義国

 資本主義はアメリカを中心として発展し、社会主義ソ連を中心に発展してきた。第二次世界大戦以降、ソ連に続いて、東ドイツ,中国,ベトナムらが社会主義の仲間入りをしていく。しかし、やはり経済発展しにくいというデメリットは大きすぎる。ソ連にもいよいよ限界が来ることになる。ソ連の崩壊を受け、多くの国は資本主義へと転換していくこととなった。故に現在も社会主義を貫いている国は非常に稀だ。調べてみたところ、現存する社会主義国家は中国,ベトナム,ラオス,キューバの四カ国くらいなものらしい。ただ、社会主義国家と一口に言っても、中国やベトナムの経済は完全に資本主義のそれと変わらないという点に注意する必要がある。一党独裁で、政治による企業の統制等はあるのだろうが基本的には自由競争が行われているのだ。それに対して、キューバは本当の意味で社会主義国家なのだ。

3-3 キューバの描く社会主義とは

 キューバと他の社会主義国家との間にある違いは何なのか、それは経済が国に管理されている計画経済であることだ。キューバは今でも国が様々な産業を管理しており、労働者の8割以上が国家公務員である。通信業界はETECSAという企業一つだし、バス会社もVIAZULだけ、スーパーに置いてある水やジュースも1ブランドのみ。すべての業界において、国営企業1社しか存在しないのだ。そんな事ある?!って思うよね、そんな事あるんだよね…このキューバには。

 改めて、社会主義って言われてもどんな生活を送っているのかっていうのは、私達日本国民には理解しがたい部分があると思うので、具体的にどんなことが違うのかを整理していく。

  1. 食べ物や飲み物などの生活必需品は配給制
  2. 労働者の8割は国家公務員であり、月収は職業に関わらず30ドル
  3. 職業は高校進学時点でおおよそ決まっている
  4. 住居は国から与えられたもののみ、購入は不可
  5. 大学院まで学費無料

1. 食べ物や飲み物などの生活必需品は配給制

 キューバでも今でも配給制が続いている。厳密に言えば完全な配給ではなく、お金を払って買っているのだが、パン一個の値段が日本円で約0.2円とかで、実質タダと言ってもいい。キューバでは配給手帳のようなものが国民一人ひとりに渡されており、毎月配給手帳の範囲内で生活に必要なものを格安で仕入れることができるのだ。キューバではこの配給によって手に入るもの以外は非常に高額となってしまう。そのため、酒や葉巻、お菓子などはかなりの嗜好品であり、普通では入手がかなり困難である。そもそも、キューバは配給所があるため、コンビニやスーパーマーケットと言ったものがほとんど存在しない。そのため、観光客が水やお酒、ジュース、お菓子などを買いたくてもどこにも売っていないのだ。そんな国初めてだった。どんな国にもコンビニやスーパー、商店のようなものがあると思っていた。私は旅先では大きめのジュースとお菓子を買い込み、バスの移動時間やホテルでのんびり本を読みながらジュースとお菓子を楽しむのが大好きなのだが、キューバではそれができなかった。加えて、コンビニやスーパーがないということは、当然デパートなんてのもない。アパレルブランドもないし、Appleショップなんてのはもってのほかだ。キューバでの生活は非常に質素なものだ。与えられるのは食料、水、トイレットペーパーなどの最低限の生活必需品のみだ。

 日本で生活していると想像もつかないだろう。コンビニもスーパーもなく、配給の範囲外のもの(お酒やお菓子)は手に入れることができない。おかしやジュース、お酒はもちろん、携帯やブランド物のおしゃれな洋服なんてものはまず手に入らない。

2. 労働者の8割は国家公務員であり、月収は職業に関わらず30ドル

 「いやいや、待て待て、そんなのは一部の貧しい人の話だろう。日本だって携帯を持つことができない人やブランドの服を変えない人なんてたくさんいるじゃないか」なんて思うかもしれないが、そんなことはない。キューバ国民はほぼほぼみんな携帯やブランドバッグなんて持てない。それがこの②、労働者の殆どが国家公務員であり、月給が30ドルであることとつながっている。

 キューバは国内の産業がほぼ全て国営企業によって賄われており、労働者はほぼ全員国営企業で働く国家公務員ということになる。バスの運転手も、通信会社の受付嬢も、医者も皆国家公務員なのだ。キューバでは企業の売上は一度国が税金としてその殆どを徴収され、社会保障として全国民に再分配されることとなる。そのためキューバの労働者の給料は皆等しく30ドル程度となっている。

 日本に暮らす人には想像がつかないかと思うのだが、ここで言う労働者とは文字通り働くものすべてであることに注意してほしい。配給所でパンを売るおばさんも、医者も、弁護士も、大統領さえも給料は一緒なのだ。これには心底驚いた。またまたそんなことある?!ってなった。あるんですよねー…キューバなら。

3. 職業は高校進学時点でおおよそ決まっている

 キューバでは専門の勉強をしてきた人がその専門職につくこととされており、高校進学時くらいには、それぞれの得意不得意や、適正に応じて進学先が割り振られることになるらしい。その進学先の割り振りには多くの場合個々の意思が反映されることがない。つまり、キューバ国民は高校進学時点である程度将来の職業の幅を決められてしまうため、好きな仕事につくことが非常に難しいのだ。

 日本で「好きなことで生きていく!」なんてキャッチコピーが流行ったことがあったけど、そんな自由は存在していないのだ。

4. 住居は国から与えられたもののみ、購入は不可

 キューバでは、家を購入することができない。もちろん高すぎて購入できないというのもあるが、そもそも国が所有しているもので、売り出されていないのだ。そのため、結婚に際して新居に引っ越すなんてことはない。結婚して同居することになったらどちらかの実家で相手方の両親とともに暮らしていくことになるのだ。キューバの家庭の多くは、マンションの一室に2,3世代で一緒に暮らしているため、普通は部屋が足りないくらい窮屈な暮らしなのではないかと思う。しかしながら、稀に大きな家に住み、人に部屋を貸せるくらいスペースが余っている人がいる。どのようにしてこのような住環境の格差が生まれたのだろうか。詳しくはわからないが、どうやら革命時の貢献度によって、アメリカに亡命した富豪らの住居が分配されたらしい。要は生まれだ。生まれた時点で先祖が革命に貢献していたらでかい家に住める。なんとも厳しい世の中だ。

 ちなみに、住宅の購入はできないとされているが、住宅の交換は当事者同士の合意があれば可能らしい。AさんがBさんの家に住んでみたいと思っていて、Bさんも同じようにAさんの家に住んでみたいと思っていれば、お互いの家を交換して引っ越すことができるのだ。不思議な制度だ…

5. 大学院まで学費無料

キューバでは学費はどこまで進学しても無料となっている。義務教育は日本と変わらず中学校までなのだが、その後も高校、大学、大学院までキューバでは無償で教育を受けることができる。そのため、キューバにはアメリカや南米諸国から安価ながら高度な教育を受けられるとして留学生が大勢来ているらしい。

 ちなみにキューバの教育はいわゆる先進国で行われるものと遜色ないレベルで、中南米でトップクラスの医者の数を誇る。そのため中南米で医者が不足している地域に派遣して貢献しているそう。

3-4 キューバ国民は幸せ?

 ここまでキューバの持つ特殊な政治体制について整理してきたのだが、実際キューバに住む人々はこのような状況に満足しているのだろうか。私達日本人からすると、上記のような制度で羨ましいと思うことなんて学費無償くらいで、ほかはどれも論外だと感じるのではないだろうか。私自身、正直日本に生まれてよかったと思った。だがしかし、キューバ国民は案外自分たちの生活に満足しているように見える。別に現地の人にインタビューしたわけでもないので、あまり適当なこと言うのもあれなのだが、私が過去見てきた国々(アメリカ、スペイン、イギリス、タイ、ベトナムなど)に比べると道行く人々、店頭で働く人々は意外にも楽しそうなのだ。どことなく流れてくる音楽に合わせて体を動かす陽気な人、仕事中にも関わらず楽しそうにおしゃべりする人、朝から夜まで軒先で楽しくお話する人。みんな幸せそうだった。

 そうなると、やっぱりキューバ社会主義体制は成功していると言えるのではないだろうか。たまたま日本に生まれて、努力で自分の道を切り開くことができる世界を見てきたからこそ、キューバの生活が不憫に感じられるが、キューバに生まれていれば、他者との競争もなく気ままに適当に働けて、それでいて一定の生活が保障されていることを幸せなことだと感じるのかもしれない。

私見

最後にキューバについてのまとめとして、自分がどう感じたのか、どう考えているのかについて記して終わろうと思う。

 結論からすると、キューバは今の社会主義体制をぶち壊す必要があると考えている。「結果の平等のために機会の不平等を許容すること」が間違っていると考えているからだ。

 正直旅行者だった私の主観的な考えからすれば、通信はないわコンビニはないわで不便すぎるので、はやく経済発展してくれーなんて思いも多少あるんだけど、それ抜きにしてもキューバの人たちに平等な機会を与えるべきだと私は思う。キューバは何でもかんでも政府に決められて、自分の意志で決められることなんて結婚相手くらいなものなんじゃない?と思う。そしてその生活にみんなが満足してしまっている。本当にそれでいいんだろうか。きっとキューバにだって、携帯がほしい人、おしゃれがしたい人、大きな家に住みたい人、憧れの職業がある人がいるに違いない。そういった人たちの機会を不当に奪って、最低限の生活だけを保証することは正しいことなのだろうか?

 今の社会主義の形を捨てて、自由競争を取り入れれば、きっと職を失い、路頭に迷う人は出てくる。いずれは日本やアメリカと同じ超格差社会になっていく。けれど、平等な機会のもとで生じた結果の不平等なら許容できるんじゃないだろうか。「君はAさんの子供だからこの家以外に住むことはできないよ」とか「君は頭がいいみたいだから技術職として通信設備の補修にあたってくれ」とかそんなことで人生決められるより、よっぽどいいじゃないかと思ってしまうのだ。

 まぁなんにせよ、私は今回キューバを旅行し、キューバについていろいろ調べ、実際に暮らしぶりを見てみて、日本に生まれて自分のやりたいことをさせてもらえる環境がとても幸せなことなんだなと思ったし、これからも日本で自分のやりたいことのために一生懸命努力していきたいなと思った。

 皆さんは、どんな事を考えるんでしょうか…きっと日本に生まれている人は多少の差異はあれど同じようなことを考えるのではないでしょうか…