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キューバって国の話

キューバって国の話

f:id:eJern:20200412160128j:plain 2020/3/22

はじめに

 まず、キューバと聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。「最近アメリカと国交が復活したらしい」「キューバ危機」「カリブ海最大の島」「世界一成功している社会主義国家」「メジャーリーガーがいる」などなど、様々なイメージがありつつも、キューバという国をある程度ちゃんと理解している人は少ないのではないかと思う。私もその一人だった。キューバ社会主義国家であること、アメリカとの国交を断絶していたが、最近(オバマ大統領時)アメリカと国交が復活したこと。知っていたのはこれくらいだ。「キューバって社会主義国家ってこと以外になにか語ることあるの?」と聞かれれば、「まあ全ては社会主義国家ってことに帰着するんだけど…」って感じではあるのだが、ただ一言に”キューバ=社会主義国家”と片付けるにはもったいないくらいキューバは私達に様々なことを考えさせてくれるのだ。

 今回はキューバという国の歴史をたどりながら、キューバという国の面白さについて書いていこうと思う。

歴史

2-1 コロンブスによる発見から植民地時代

 キューバカリブ海最大の島国で、大航海時代に新大陸発見に向け動いていたコロンブス一行に発見されることから歴史が始まる。コロンブスキューバの東端にあるバラコアという街に上陸したと言われ、上陸した際にキューバの壮大な自然を前に、「この世で最も美しい島だ」と感動したらしい。

 スペインはすぐさまこのキューバを植民地とすることにした。一説では、スペイン語の調停書を持ってきて、理解できるわけもない原住民に、”断れば死を、受け入れれば奴隷化を”強いたと言われている。どう考えても地獄の二択なのだが、当時のスペインはキューバにとっては強すぎる相手。受け入れざるを得ず、キューバはスペインの植民地となる。

 その後コロンブスキューバという土地のもつサトウキビ大量栽培の可能性をすぐさま見抜き、二度目の航海にはサトウキビの苗を大量に持参したと言われている。スペインはここからキューバを大サトウキビ農場として発展させていく。アフリカから大量に奴隷を仕入れ、奴隷農場をどんどん広げていった。その結果、一部の大農園主をだけが富を拡大し、農園で働く奴隷たちは貧しさを極め、貧富の差が広がっていった。

 そしてその頃、砂糖の一大産地であったハイチで奴隷による反乱が起き、砂糖プランテーションが崩壊したことを受け、キューバは世界最大の砂糖生産国となっていく、

 ちなみに、キューバの原住民はスペインにより持ち込まれた疫病によってその殆どが死んでしまったとされている。その他にもスペインのあまりにも強引な統治体制に耐えかねた者が反乱を起こし、処刑された者もいる。処刑を前にした族長に宣教師たちは「私達を信じれば天国に行ける」と言ったのに対して、族長は「お前たちスペイン人がいるのが天国なら、地獄のほうがマシだ」と言い放ったなんて逸話もある。漫画みたいでかっこいい…。漫画なら彼の意思を継いだ弟子たちが数年後、数十年後に力をつけて革命を成し遂げるよね。さて現実ではどうなるのか…

2-2 第一次独立戦争から第二次独立戦争

 スペインからの支配に疑問を持ったキューバ生まれの白人(クリオーリョ)の農園主カルロス・セスペデスが、自身の農場の奴隷を開放し、スペインに宣戦布告。以降10年間に渡って戦争が続いた(十年戦争)。結果としてはキューバ革命軍の敗北となるが、この10年戦争をきっかけにキューバ各地で革命軍が結成され、スペインに対する反発が起きていた。そんな中、作家として絶大な影響力を持ちながら政治家でもあったホセ・マルティが平等な社会を求め第二次独立戦争を開戦。指揮者だからといって後ろでふんぞり返るでもなく、むしろ自分がみんなのお手本になるべきだと考えたマルティは、戦線にがんがん出ていき、スペイン軍の銃弾を受けて死んだ。

 ちなみに、なんでかはわからないけど、キューバの革命に関わった若者は皆パッションが溢れすぎていて、マルティのように「俺がやらなければ!」みたいな使命感を抱き、みんな命を惜しまずに進軍していく。後に出てくるカストロゲバラもその一人。

 さて、第二次独立戦争も結局の所キューバの敗北に終わるのだが、終わり方が少し異なる。第一次独立戦争ではスペインに敗北して終わっていたが、実は第二次独立戦争では、スペインには勝利するのだ。しかし、その勝利の背景にはアメリカの手助け(勝手に参戦してきた)があり、スペインからの支配を退けはしたが、今度はアメリカによる支配が始まるのだ。当時キューバは外国資本の工場が次々に入り込み、その分砂糖の生産が加速して行く。アメリカはキューバにどんどん工場を設け、気づけば砂糖の輸出先のメインはスペインではなく、アメリカになっていた。このときからすでにアメリカによる実質的な支配がじわじわと忍び寄っていたのだ。

 キューバはこの第二次独立戦争を経て独立することとなるのだが、アメリカとの間に不平等条約の締結を強いられることとなる。アメリカ軍の基地を置くこと、アメリカ以外の国からお金を借り入れてはいけないこと、アメリカ以外の国に土地を貸してはいけないことなどなど、江戸時代に日本が開国させられたときと同じだ…

2-3 アメリカとの癒着からキューバ革命

 アメリカによる支配はバティスタ政権時にピークを迎える。アメリカの支援を受けてクーデターを起こし、政権を手に入れたフルヘンシオ・バティスタは、私利私欲を満たす独裁を始めた。自分のためにキューバという国をアメリカに売ったのだ。アメリカ政府,企業,マフィアにキューバ国内における利権を保護して、キューバ国民が搾取されるのを黙認していたのだ。

 そんな腐敗したバティスタ政権を終わらせるべく、フィデルとラウル(カストロ兄弟)が立ち上がる。1953年、サンティアゴ・デ・クーバにあるモンカダ兵営を奇襲する(この事件が後のキューバ革命の出発点だと今でも語り継がれている)。この奇襲は結果としては失敗に終わりフィデルは投獄されてしまう。しかし、フィデルを開放せよとの声が高まったこともあり、恩赦によりフィデルは釈放されることになる。フィデルは、革命のために戦力を整える必要があると考えメキシコへ亡命。そこで革命の鍵となる盟友チェ・ゲバラと出会う。

 ゲバラとの出会いから2年がたった1955年、約80人の仲間とともにフィデルは再びキューバに帰ってくる。ちなみに、当時キューバ上陸のために使われたグランマ号は定員12名ほどだったそう。そのグランマ号に80人近くも乗ってキューバに渡ってきたというのだから驚きだ。しかもフィデルは、自分が帰ってきたことをキューバの国民に伝え、安心させなければと考え、上陸場所を予め宣言していたらしく、当然のごとく待ち伏せを受け、8上陸した仲間の殆どを失うこととなる。なんていうか…ほんとにキューバ革命に携わったキューバの青年たちはパッションバカで、「私が来た!」みたいなヒーロー気取りを平気でやってしまうんですよね…(決してけなしているわけではないです、実際彼らはヒーローだしね!)

 帰ってきたフィデルたち革命軍は労働者層から熱い支持を受け各地で仲間を集め、1959年、ついに首都ハバナを制圧し、バティスタ政権を倒すことに成功する。フィデルらは革命政権を打ち立て、いよいよここで初めて「キューバ革命」が達成される。

2-4 アメリカとの対立から社会主義国家へ

 バティスタ政権を追い出した革命政権はアメリカから敵対視されることとなる。まずアメリカはキューバの砂糖の輸入量をコントロールすることで、経済難に陥らせる。それでも音を上げないキューバに対し、平等主義を嫌った当時の富裕層のキューバ人を利用して、キューバを攻撃。結果として、ソ連の援助を受けたキューバがこの攻撃を退けるが、アメリカはこれを受けキューバとの国交を断絶。経済難となったキューバソ連からの支援を得るべく社会主義体制へと移行していく。

 こうしてソ連とのつながりが強まり、ソ連アメリカへの圧力のためキューバ国内に核ミサイルを配置しようとして起きたのが有名な「キューバ危機」だ。ソ連が核ミサイルを持ち帰ることでなんとか一件落着する。

 その後1991年ソ連崩壊を受け経済的な支援がなくなったキューバはふたたび経済危機に。これを受け、政府は経済改革に乗り出す。外貨の所持解禁や、一部自営業の認可など、部分的に市場原理に基づく仕組みを導入して回復の兆しが見られるようになる。

 その後、革命を実現し、国の最高指導者としてキューバを導いてきたフィデルが指導者を引退。弟のラウルにその地位を引き継いだ。ラウルもフィデルの方針を受け継ぎ、経済改革を繰り返し、国の発展及び維持に努めた。

 2015年、ラウルとオバマが対談。カナダ、ローマ教皇などの強力を得て、キューバアメリカの首脳会談が実現。アメリカとの国交回復へと向かうことになったが…トランプ大統領キューバとの貿易や金融取引の規制を発表し国交回復ムードに陰りが見えている。

2-5 これからのキューバ

 キューバ革命の主役であるフィデルチェ・ゲバラが亡くなり、弟ラウルも最高指導者を引退。加えてオバマ大統領時に回復するかに見えたアメリカとの国交もトランプ大統領になった今どうなるのかわからなくなってきてしまった。

 これからのキューバは一体どのように発展していくのだろうか、社会主義国家としての姿を貫いていくのか、それとも資本主義の波に飲まれていくのか注目だ。

世界で一番成功している社会主義国家とは…

3-1 資本主義と社会主義

​ 先程から何度も書いてきたが、そもそも社会主義と資本主義とはなにか、ということから考えていく。

​ 資本主義とは、本当に平たく言えば、資本(お金)がある人が偉い社会である。お金がある人が、あらたにお金を稼ぐ仕組みを作り出す。頑張った人はその分だけお金を稼ぐことができるし、そうして稼いだお金で豊かな生活を手にすることができる。そういった社会だ。資本主義では自由競争市場を主としている。自由競争市場とは、市場に国が介入することがないため、誰でも勝手に企業を作ることができるし、ビジネスをスタートすることができる。すると一分野、例えばラーメン屋が大量にできたりもする。しかし、当然供給過多となり、消費者は多くのラーメン屋の中からうまいラーメン屋を選び、選ばれる店と選ばれない店に分かれていく。選ばれなくなったラーメン屋は自然に店を畳む。そうして供給量が勝手に調整されていく(ちなみに、これがアダム・スミスの言う「見えざる手」と呼ばれるものらしい)。この自由競争市場では、他社よりも優れたサービス、優れた商品を提供できなければ店が潰れてしまうため、自然と全員がよりよいサービスを目指すし、他よりも劣っているものは勝手になくなっていく。そうして経済が勝手に発展していく。資本主義社会では、ビジネスに成功して富を築いた者とそうでない者の間に大きな差が生じる。ビジネスに成功して、プライベートジェットで移動し、女優とパリコレを見に行って、有名画家の絵を落札して部屋に飾る事ができる人がいる傍らで、新宿駅高架下でダンボールにくるまって眠る人がいる。そんな格差社会が普通に生じうるのが資本主義のデメリットとも言えるだろう。

 対する社会主義とは、平たく言えば、みんな平等がいいよね、みんなが稼いだお金をみんなで使っていこうよっていう社会だ。社会主義では国が経済を管理していく。そのため、どこの会社が何をどれだけ作るのかを、国のトップがすべて管理してコントロールするのだ。したがって作り過ぎとか供給不足は起こらないし、国がうまく回っている分には失業者も出ず、みんな最低限の生活を保障されることとなる。この社会主義では、国にお金が集約されたあとで、国民に再分配するため、国に富が蓄積されることとなる。すると、国はその集まった富を医療や教育の無償化と言った社会保障にまわすことができるようになる。そうしてみんなが豊かな生活を手に入れられるという(理論上は)夢のシステムなのが社会主義なのだ。しかし、当然そんないいことだらけの夢のシステムなわけがない。社会主義国家には経済発展しにくいというデメリットが存在するのだ。

​ 会社は競争なくして発展しない。国に支えられて、一定の仕事が確保されているし、他に競争する企業がいないのだから、会社が潰れることもない。そんな状況でわざわざ新製品の開発だとかサービスの向上だとかいう企業努力はしないのだ。会社に限らず、人間というのは努力の有無に関わらず結果が同じになるのならば努力を怠る生き物なのだ。

3-2 世界に現存する社会主義国

 資本主義はアメリカを中心として発展し、社会主義ソ連を中心に発展してきた。第二次世界大戦以降、ソ連に続いて、東ドイツ,中国,ベトナムらが社会主義の仲間入りをしていく。しかし、やはり経済発展しにくいというデメリットは大きすぎる。ソ連にもいよいよ限界が来ることになる。ソ連の崩壊を受け、多くの国は資本主義へと転換していくこととなった。故に現在も社会主義を貫いている国は非常に稀だ。調べてみたところ、現存する社会主義国家は中国,ベトナム,ラオス,キューバの四カ国くらいなものらしい。ただ、社会主義国家と一口に言っても、中国やベトナムの経済は完全に資本主義のそれと変わらないという点に注意する必要がある。一党独裁で、政治による企業の統制等はあるのだろうが基本的には自由競争が行われているのだ。それに対して、キューバは本当の意味で社会主義国家なのだ。

3-3 キューバの描く社会主義とは

 キューバと他の社会主義国家との間にある違いは何なのか、それは経済が国に管理されている計画経済であることだ。キューバは今でも国が様々な産業を管理しており、労働者の8割以上が国家公務員である。通信業界はETECSAという企業一つだし、バス会社もVIAZULだけ、スーパーに置いてある水やジュースも1ブランドのみ。すべての業界において、国営企業1社しか存在しないのだ。そんな事ある?!って思うよね、そんな事あるんだよね…このキューバには。

 改めて、社会主義って言われてもどんな生活を送っているのかっていうのは、私達日本国民には理解しがたい部分があると思うので、具体的にどんなことが違うのかを整理していく。

  1. 食べ物や飲み物などの生活必需品は配給制
  2. 労働者の8割は国家公務員であり、月収は職業に関わらず30ドル
  3. 職業は高校進学時点でおおよそ決まっている
  4. 住居は国から与えられたもののみ、購入は不可
  5. 大学院まで学費無料

1. 食べ物や飲み物などの生活必需品は配給制

 キューバでも今でも配給制が続いている。厳密に言えば完全な配給ではなく、お金を払って買っているのだが、パン一個の値段が日本円で約0.2円とかで、実質タダと言ってもいい。キューバでは配給手帳のようなものが国民一人ひとりに渡されており、毎月配給手帳の範囲内で生活に必要なものを格安で仕入れることができるのだ。キューバではこの配給によって手に入るもの以外は非常に高額となってしまう。そのため、酒や葉巻、お菓子などはかなりの嗜好品であり、普通では入手がかなり困難である。そもそも、キューバは配給所があるため、コンビニやスーパーマーケットと言ったものがほとんど存在しない。そのため、観光客が水やお酒、ジュース、お菓子などを買いたくてもどこにも売っていないのだ。そんな国初めてだった。どんな国にもコンビニやスーパー、商店のようなものがあると思っていた。私は旅先では大きめのジュースとお菓子を買い込み、バスの移動時間やホテルでのんびり本を読みながらジュースとお菓子を楽しむのが大好きなのだが、キューバではそれができなかった。加えて、コンビニやスーパーがないということは、当然デパートなんてのもない。アパレルブランドもないし、Appleショップなんてのはもってのほかだ。キューバでの生活は非常に質素なものだ。与えられるのは食料、水、トイレットペーパーなどの最低限の生活必需品のみだ。

 日本で生活していると想像もつかないだろう。コンビニもスーパーもなく、配給の範囲外のもの(お酒やお菓子)は手に入れることができない。おかしやジュース、お酒はもちろん、携帯やブランド物のおしゃれな洋服なんてものはまず手に入らない。

2. 労働者の8割は国家公務員であり、月収は職業に関わらず30ドル

 「いやいや、待て待て、そんなのは一部の貧しい人の話だろう。日本だって携帯を持つことができない人やブランドの服を変えない人なんてたくさんいるじゃないか」なんて思うかもしれないが、そんなことはない。キューバ国民はほぼほぼみんな携帯やブランドバッグなんて持てない。それがこの②、労働者の殆どが国家公務員であり、月給が30ドルであることとつながっている。

 キューバは国内の産業がほぼ全て国営企業によって賄われており、労働者はほぼ全員国営企業で働く国家公務員ということになる。バスの運転手も、通信会社の受付嬢も、医者も皆国家公務員なのだ。キューバでは企業の売上は一度国が税金としてその殆どを徴収され、社会保障として全国民に再分配されることとなる。そのためキューバの労働者の給料は皆等しく30ドル程度となっている。

 日本に暮らす人には想像がつかないかと思うのだが、ここで言う労働者とは文字通り働くものすべてであることに注意してほしい。配給所でパンを売るおばさんも、医者も、弁護士も、大統領さえも給料は一緒なのだ。これには心底驚いた。またまたそんなことある?!ってなった。あるんですよねー…キューバなら。

3. 職業は高校進学時点でおおよそ決まっている

 キューバでは専門の勉強をしてきた人がその専門職につくこととされており、高校進学時くらいには、それぞれの得意不得意や、適正に応じて進学先が割り振られることになるらしい。その進学先の割り振りには多くの場合個々の意思が反映されることがない。つまり、キューバ国民は高校進学時点である程度将来の職業の幅を決められてしまうため、好きな仕事につくことが非常に難しいのだ。

 日本で「好きなことで生きていく!」なんてキャッチコピーが流行ったことがあったけど、そんな自由は存在していないのだ。

4. 住居は国から与えられたもののみ、購入は不可

 キューバでは、家を購入することができない。もちろん高すぎて購入できないというのもあるが、そもそも国が所有しているもので、売り出されていないのだ。そのため、結婚に際して新居に引っ越すなんてことはない。結婚して同居することになったらどちらかの実家で相手方の両親とともに暮らしていくことになるのだ。キューバの家庭の多くは、マンションの一室に2,3世代で一緒に暮らしているため、普通は部屋が足りないくらい窮屈な暮らしなのではないかと思う。しかしながら、稀に大きな家に住み、人に部屋を貸せるくらいスペースが余っている人がいる。どのようにしてこのような住環境の格差が生まれたのだろうか。詳しくはわからないが、どうやら革命時の貢献度によって、アメリカに亡命した富豪らの住居が分配されたらしい。要は生まれだ。生まれた時点で先祖が革命に貢献していたらでかい家に住める。なんとも厳しい世の中だ。

 ちなみに、住宅の購入はできないとされているが、住宅の交換は当事者同士の合意があれば可能らしい。AさんがBさんの家に住んでみたいと思っていて、Bさんも同じようにAさんの家に住んでみたいと思っていれば、お互いの家を交換して引っ越すことができるのだ。不思議な制度だ…

5. 大学院まで学費無料

キューバでは学費はどこまで進学しても無料となっている。義務教育は日本と変わらず中学校までなのだが、その後も高校、大学、大学院までキューバでは無償で教育を受けることができる。そのため、キューバにはアメリカや南米諸国から安価ながら高度な教育を受けられるとして留学生が大勢来ているらしい。

 ちなみにキューバの教育はいわゆる先進国で行われるものと遜色ないレベルで、中南米でトップクラスの医者の数を誇る。そのため中南米で医者が不足している地域に派遣して貢献しているそう。

3-4 キューバ国民は幸せ?

 ここまでキューバの持つ特殊な政治体制について整理してきたのだが、実際キューバに住む人々はこのような状況に満足しているのだろうか。私達日本人からすると、上記のような制度で羨ましいと思うことなんて学費無償くらいで、ほかはどれも論外だと感じるのではないだろうか。私自身、正直日本に生まれてよかったと思った。だがしかし、キューバ国民は案外自分たちの生活に満足しているように見える。別に現地の人にインタビューしたわけでもないので、あまり適当なこと言うのもあれなのだが、私が過去見てきた国々(アメリカ、スペイン、イギリス、タイ、ベトナムなど)に比べると道行く人々、店頭で働く人々は意外にも楽しそうなのだ。どことなく流れてくる音楽に合わせて体を動かす陽気な人、仕事中にも関わらず楽しそうにおしゃべりする人、朝から夜まで軒先で楽しくお話する人。みんな幸せそうだった。

 そうなると、やっぱりキューバ社会主義体制は成功していると言えるのではないだろうか。たまたま日本に生まれて、努力で自分の道を切り開くことができる世界を見てきたからこそ、キューバの生活が不憫に感じられるが、キューバに生まれていれば、他者との競争もなく気ままに適当に働けて、それでいて一定の生活が保障されていることを幸せなことだと感じるのかもしれない。

私見

最後にキューバについてのまとめとして、自分がどう感じたのか、どう考えているのかについて記して終わろうと思う。

 結論からすると、キューバは今の社会主義体制をぶち壊す必要があると考えている。「結果の平等のために機会の不平等を許容すること」が間違っていると考えているからだ。

 正直旅行者だった私の主観的な考えからすれば、通信はないわコンビニはないわで不便すぎるので、はやく経済発展してくれーなんて思いも多少あるんだけど、それ抜きにしてもキューバの人たちに平等な機会を与えるべきだと私は思う。キューバは何でもかんでも政府に決められて、自分の意志で決められることなんて結婚相手くらいなものなんじゃない?と思う。そしてその生活にみんなが満足してしまっている。本当にそれでいいんだろうか。きっとキューバにだって、携帯がほしい人、おしゃれがしたい人、大きな家に住みたい人、憧れの職業がある人がいるに違いない。そういった人たちの機会を不当に奪って、最低限の生活だけを保証することは正しいことなのだろうか?

 今の社会主義の形を捨てて、自由競争を取り入れれば、きっと職を失い、路頭に迷う人は出てくる。いずれは日本やアメリカと同じ超格差社会になっていく。けれど、平等な機会のもとで生じた結果の不平等なら許容できるんじゃないだろうか。「君はAさんの子供だからこの家以外に住むことはできないよ」とか「君は頭がいいみたいだから技術職として通信設備の補修にあたってくれ」とかそんなことで人生決められるより、よっぽどいいじゃないかと思ってしまうのだ。

 まぁなんにせよ、私は今回キューバを旅行し、キューバについていろいろ調べ、実際に暮らしぶりを見てみて、日本に生まれて自分のやりたいことをさせてもらえる環境がとても幸せなことなんだなと思ったし、これからも日本で自分のやりたいことのために一生懸命努力していきたいなと思った。

 皆さんは、どんな事を考えるんでしょうか…きっと日本に生まれている人は多少の差異はあれど同じようなことを考えるのではないでしょうか…