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経済用語ボキャ貧克服計画4

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オプション取引について

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原油の協調減産 メキシコが強気姿勢を示す

 新型コロナウイルスの影響で、3月以降、原油価格の下落が目立っている。平時1バレル(約160L)60ドル程度だった原油が、現在20〜25ドル程度で推移。これによって世界各国でさまざまな影響が出始めた。

 まず産油国であるサウジアラビア政府の財政状況に対する懸念が広がっている。続いてシェールオイルを積極的に生産していたアメリカでは、原油シェールオイルの値段を下回ったことで、エクソンモービル等シェール業界の企業が相次いで予定していた設備投資を中止した。

そこで、主要産油国アメリカは4月10日緊急会議を開催。アメリカは1000万バレル/日の減産を要請したが、協議により970万バレル/日の減産が決定した。

ところが、日経新聞によれば、原油を1バレルあたり49ドルで売る権利=プット・オプションを購入していたメキシコは、減産に対して消極的な姿勢を示していると伝えられていた。原油安による影響を大きく受けないからだ。

今日はこのオプションについて学んでいく。

オプション取引とは

オプション取引とは、「将来(1年後など)」「ある商品(米や原油や株券)」を「一定の価格(100円)」で「買う売る」「権利」を「ある値段(50円)」で売買するという取引である。イメージしづらいかと思うので、実際に数値を当てはめて考えてみる。

Aさんは農業を営んでおり、コメを毎年100キロ生産しており、Aさんのお米は1キロ当たり約3000円程度で売買されていた。

しかし、米は需要と供給のバランスによって年ごとに値段が上下することが多く、Aさんの収入はいい年もあれば悪い年もあり、不安定だった。なんとか収入を安定させたいと思ったAさん、ここで登場するのがオプション取引だ。

オプション取引では、「1年後にコメを1キロ3000円で売る権利を買う」という取引をすることができる(このオプション取引で売買されるのはコメではなく「権利」であることが肝となってくる)。

さて、これを聞いたAさんは、コメの価格下落リスクをヘッジしようと考え、この権利を20000円で購入した。

ここから2つの場合に分けて考えていく


  1. 今年の日本は比較的温暖な気候が続き、台風にも見舞われなかったこともあり、Aさんを含め全農家が平年よりも1.5倍の収穫高を記録した。その結果、コメの供給量は増え、コメの価格が1キロ2000円に下落することとなった。Aさんのお米も2000円となり、本来であればAさんの収入は平年比17%減となる。ここで登場するのが、先ほど契約したオプション契約だ。

    Aさんは、1年前に1キロ3000円でお米を買ってもらう権利を有しており、時価がいくら落ちていても、オプションを契約した相手方に3000円で買ってもらうことができる。

    そのため、Aさんは平年通りの収入を得ることができる。

  2. 反対に、新潟や富山で全く雨が降らず、日本全体で米の収穫量が大きく落ち込んだ場合、市場では米が希少となり価格が3500円で取引されることとなった。

    このとき、Aさんは被害を受けず平年通り100キロ生産できたとき、Aさんの収入は17%増となるはずである。

    ここで疑問となるのが、Aさんがした1キロ3000円で買ってもらう契約はどうなるの?ということだろう。

    オプション取引の肝は先ほども言った通り、売買されているのは「権利」である点だ。権利というのは、行使してもいいし、捨ててもいい。つまり、Aさんはこの権利を行使すれば、市場で3500円のコメを3000円で売ることになり損するのだが、権利を放棄すれば、3500円でコメを売ることができるのだ。

    思い通りにならなければ権利を放棄すればいいのだから、Aさんの取引は絶対損しないめちゃくちゃお得な取引じゃないかと思うかもしれない。しかし、ここで思い出してほしい、Aさんはこの権利を「20000円」で買っているということを。Aさんは権利を放棄する際、この20000円も同時に失う。

    とはいえ、オプションの買い手であるAさんは確かに売り手に比べるとリスクが小さいことは確かだ。Aさんはお米の価格が落ちれば落ちるほど、市場価格と比べれば得をすることになる。それに対して、価格が上がりまくったとしたら権利を放棄して市場で売れば利益を出せる。

    このようにオプション取引においては、買い手は市場価格の上下によって利益を大きくすることはできるが、損失は最初に払った権利の値段(プレミアムという)に限定される。


以上のような取引がオプション取引と呼ばれるものだ

さて、上の例でオプション取引についてなんとなく理解していただけただろう。それでは、今回のメキシコの原油オプションについて考えてみる。

メキシコが購入した権利は「原油を49ドルで売ることができる」というもので、このまま原油価格が落ちたままでも、大きな問題がないことは理解していただけたかと思う。

ここで「市場で20ドルしかしない石油を、49ドルで買わされる相手方は大損じゃないか?!」といった疑問が生じる。この疑問について、このオプションのみを売買していたなら、この疑問に対する答えはYesであり、この相手方は大損こくことになる。

先ほどの例で話したが、買った人(先ほどの例でいえばAさん)は権利を購入しているため、放棄することが可能だが、売った人(Bさんとする)は買った人(Aさん)に権利を行使された際に応じる「義務」が生じる。そのため、Aさんに買ってくれと言われたら値段がいくらであろうとBさんは買いとる義務があるのだ。


メキシコにオプションを売った人は大損するのか

※ここから少し複雑になります

さて、メキシコから安い原油を高く買わされることになった相手方は本当に大損するのだろうか?この件について、少し複雑な話になるのだが、頑張ってついてきて欲しい。

オプション取引というのは、単純にひとつの権利を買う、売るといった一方通行の取引だけでなく、組み合わせることができる。

例えば、「1年後にコメを売る権利」をAさんに売ったBさんは、同時にCさんから「1年後にコメを売る権利」を購入することでリスクヘッジをすることができる。この点について、あまりイメージができないかと思うので、詳しい事例で見ていく。

Aさんに「1年後に1キロ3000円でコメを買う」ことを約束したBさん。

Bさんは、1年後のお米の価値は「3000円より高くなるだろう」と考え、Aさんと当該オプション取引を行なったが、3000円より安くなる可能性も捨てきれない、むしろ大きく価格が落ちてしまうと大損だ。というのを十分理解していたBさんは、Cさんから「1年後に1キロ3500円でコメを売る権利」を購入した。するとどのようなことが起こるのか。

  1. コメの価格が「1キロ2000円」となった場合

    この場合、AB間で行われた取引では、市場価格2000円のコメを3000円で購入することになり、1キロ当たり1000円-プレミアム分の損失が出る。

    それに対してBC間で行われた取引では、市場価格2000円のコメを3500円で売却することができ、1キロ当たり1500-プレミアム分の利益が出る。

    合計すると約500円分の利益となる。(厳密には500円からプレミアムを差し引いた金額)

  2. コメの価格が「1キロ4000円」となった場合

    この場合、AB間で行われた取引では、Aさんがわざわざ4000円のコメを3000円で売らないことを踏まえると、プレミアム分が丸々利益となる。

    それに対してBC間で行われた取引では、市場価格4000円のコメを3500円で売る意味がないので、Bさんもこの権利を放棄する。すると、プレミアム分が丸々損失となる。

    結果としては、AB間の取引のプレミアムとBC間の取引のプレミアムがもし等しければ利益も損失も0となる。

といった具合に、オプション取引というのはいろいろな権利の売買を通じて、どのように相場が動くのかを予想することで、様々な効果を得ることができる(リスクヘッジアービトラージなど)。

以上のことを踏まえると、メキシコに「1バレル49ドルで売る権利」を販売したディーラーは原油価格が上がったら困る人(中国の自動車工場とか?)との間で「1バレル60ドルで売る」という権利を購入しているかもしれない。

考え出したらキリがないのだが、とにかく一方通行の取引を行っているとは限らず、むしろ双方向で取引をおこなったいると考えられ、メキシコにこのオプションを販売した販売元が大損しているとは断定できないのだ。

おわりに

さて、最後にオプション取引について整理して終わろうと思う。ポイントとしては以下

  • 将来のある時点において
  • 今きめた、一定価格で
  • ある商品を
  • 売る、または買う
  • 権利を
  • 売買する

のがオプション取引である。

ちなみに、今回は例でコメを、具体的な事例では原油について取り扱ったが、このような価格が常に上下するもの(例えば為替相場など)は全てこのようなオプション取引が行われていると思ってもいい。

とても複雑な取引なので、完全に理解するのは難しいと思う。今回紹介したオプションはプット・オプションと呼ばれる将来「売る」権利の取引と、プットオプションの買いと売りを組み合わせたバーティカルベアプットスプレッド取引というもので、他にもいろんな組み合わせがあり、それぞれについて、どのような値動きを予想してどのような目的で取引するのかというのが違うので、もし興味があれば調べてみると面白いと思う。

では今回の勉強はこの辺で。